家庭医レジデントの備忘録

内容の間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

お勧め書籍やアプリ 病棟~診療所、在宅ベースの総合診療医向け

同期や近い年代が同じ病院内にいないと、なかなかお勧め書籍って見つからないですよね。田舎だと医学書を立ち読みできる場所なんてほぼないし。
というわけでお勧め書籍&アプリリストを作ってみました。
 
できるだけ電子化して白衣を軽くしたいですが、紙媒体の方が読みやすい本も多いので使い分けが難しいところ。
 
対象は病棟~診療所、在宅ベースの総合診療医です。
産婦人科系や集中治療系はちょっと弱いと思います。
 
独断と偏見で選んでいます。経済的なCOIはありません。
名前が間違ってたらすみません。
 
 
【全般】
・Hospitalist
ほぼ全部持ってます。
 
・内科外来マニュアル
実はそんなに使ってませんが・・・手元にあると安心。
 
・内科診療フローチャート
・内科診断リファレンス
必須。
 
・総合内科病棟マニュアル
・ポケットレファラン
病棟マニュアルの方がやや好みに近い。
 
・病気がみえる
病態とか解剖生理とか基本情報に優れてます。診断や治療は参考程度に。
 
Gノート増刊 Vol.4 No.2 これが総合診療流! 患者中心のリハビリテーション〜全職種の能力を引き出し、患者さんのQOLを改善せよ!
リハビリも必須。
 
・外来診療ドリル
問題集。
 
 
・MedCalc Pro
プレディクションルールの計算など
 
・Epocrates
薬の相互作用確認。
 
今日の治療薬、当直医マニュアル、サンフォード、フローチャート漢方薬治療を入れてます。
 
・添付文書Pro
添付文書が見たいとき。
 
・ePSS
ヘルスメンテンナンスはGeneralistの必須項目です
 
・UpToDate&Dynamed
ないと困ります。
 
 
【消化器】
・肝炎診療バイブル
肝障害を極める。Generalistには内容が深すぎるかもですが
 
内視鏡する人の診断系の本はどれがいいでしょう?
 
・TG13
胆嚢炎胆管炎のガイドライン アプリで見られて便利
 
 
【循環器】
・3秒で読める心電図
すごくわかりやすいです
 
 
【内分泌代謝
甲状腺疾患の診かた考えかた
「診かた考えかた」シリーズが好きな先輩から(^^)/
 
 
【腎】
・CKDguide
2012が最新?よくまとまっていて読みやすいです
 
・レジデントのための血液透析患者マニュアル
他の先生にお勧めされました
 
 
膠原病
・すぐに使えるリウマチ膠原病診療マニュアル
必須。
 
・レジデントのためのアレルギー疾患診療マニュアル
若干読みづらいけど、他にアレルギーの本を知らないので。
 
 
【血液】
・レジデントのための血液診療の原則
読みやすいです。
 
 
感染症
・レジデントのための感染症診療マニュアル
感染症レジデントマニュアル
上が必須、下はその簡易版みたいな。
 
・抗菌薬の考え方使い方
はじめの一歩の発展形という感じ
 
・絶対わかる抗菌薬はじめの一歩
基本。
 
・サンフォード
M2Plusに入ってる
 
・Johns hopkins ABX guide
サンフォードと両方欲しいです
 
 
【呼吸器】
・レジデントのための呼吸器診療マニュアル
一応持ってます
 
 
【神経】
必須と思います。
 
・コウノメソッド流臨床認知症
一読の価値はあるかも・・・?
 
・ねころんで読めるてんかん診療
・「てんかん」のことがよくわかる本
上は医学書、下は一般書です。著者は両方同じ。
 
 
【救急】
・急性中毒診療マニュアル
・考えるER サムライプラクティス
・必勝!気道管理術
・当直御法度
・マイナーエマージェンシー
・ドクター夏井の外傷治療「裏」マニュアル
・ひとりでこなす外科系外来処置ガイド
・Step beyond residentシリーズ
どれも割とよく使ってます。
 
 
【小児科】
・HAPPY
必須。やや救急寄り?
 
・小児の薬の選び方使い方
HAPPYよりも外来向き。抗生剤の選択は他の本を読んだ方がいいと思います
 
・予防接種コンシェルジュ
子どものワクチンやるなら必須
「know VPD」ホームページと合わせて。
 
 
・妊娠と授乳
処方時にあると安心。成育医療センターのホームページでも割と代用可能
 
 
【眼科】
・ジェネラリストのための眼科診療ハンドブック
たまに使います
 
 
プライマリケアで一生使える耳鼻咽喉科診療
SASがないのが残念ですが、わかりやすいです。
 
 
【整形外科】
・手足腰診療スキルアップ
必須。解剖の本が一緒にあった方がいいと思います
 
 
【精神科】
・ACP内科医のための「こころの診かた」
CareneTVの動画がお勧め
 
 
【皮膚科】
・平本式 皮膚科虎の巻
DVDです。すごく役に立ちます。
 
 
プライマリケア医のためのLUTS診療
ないよりは良いかも
 
 
【ほか】 
・救急ICU薬剤ノート
希釈法も載っていて実践的
 
・LABORATORY MEDDICINE
検査異常の読み方が載ってる
 
・ネッター
解剖の本も必須です
 
・人体の正常構造と機能
解剖+生理の本 読みやすい
 
 
・VISIBLE BODY
・Team Lab Body
解剖アプリ。VISIBLE BODYの方がお勧め。
 
・断面図ウォーカー
OS11になったら使えなくなりました。CT画像が分かりやすかったのに・・・
 
 
2017/11/07作成

包茎 亀頭包皮炎 陰茎 balanoposthitis

亀頭:陰茎先端の丸くなった部分
包皮:亀頭を包み込む陰茎体部の皮膚のたるみ
 
 
尿閉→解除が優先
6歳以上→KOH、培養、STD評価
おむつ皮膚炎→カンジダ亀頭包皮炎
不衛生あり→非特異的亀頭包皮炎
薬使用歴あり→固定薬疹
過剰洗浄→刺激性接触性亀頭包皮炎
GAS暴露や接触→GAS亀頭包皮炎
尿道分泌→STD、性的虐待など
尿道分泌なし→細菌性亀頭包皮炎など
 
 
1/3は原因不明
一番Commonなのはカンジダ
 
 

 
 
【非特異的】
半身浴などでペニスを温める
適切な衛生状態にする
包皮内への石鹸、パウダーなどは避ける
抗生剤軟膏(ゲンタシンとか?リンデロンVGみたいな合剤でも良いみたい)→感染予防になるかもと記載あり
 
【刺激性接触性】
包皮内への石鹸、パウダーなどは避ける
ロコイド軟膏など
 
 
 
【参考文献】
UpToDate Balanoposthitis: Clinical manifestations, diagnosis, and treatment last updated:Sep 19, 2017.
Medscape Balanoposthitis Updated: Jul 13, 2017
 
 
 
 

メトホルミン まとめ 糖尿病 ビグアナイド

【要点】
1日1回投与でもいい(保険が通るかは不明)
消化管副作用は一過性
長期投与でVitB12欠乏になりうる
乳酸アシドーシスは稀だが症状は非特異的なため、疑ったら採血を。
乳酸アシドーシスハイリスク患者は投与禁忌(重度な肝障害、CKD、心不全アルコール依存症など)
eGFR<30は禁忌
eGFR30-45なら新規投与はしない
eGFR>45ならOK(添付文書上Creが男≧1.3、女≧1.2は控える方が安全かも)
造影剤投与時は添付文書のルールに従う(投与前中止、投与48時間以降に再開)
 
 
【機序】

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(医療情報科学研究所, 病気がみえる vol.3 糖尿病・代謝・内分泌, 第3版, 2012, メディックメディア.)
 
 
【用法用量】
500㎎1日2回または850㎎1日1回で開始
(Metformin: Drug information, UpToDate, Accessed June 11 2017.)
 
少量250-500㎎1日1回から開始
1日2-3回に分けて処方すると飲み忘れが多くなる。そのようなときには1日1回で服用
(金城光代, 他, ジェネラリストのための内科外来マニュアル,第2版, 2017, 医学書院.)
 
*日本の添付文書では1日2-3回分服
 
 
【消化管副作用】
口の中で鉄の味がする、食思不振、嘔気、腹部不快感、下痢
多くは軽症、一過性、可逆性
これらの副作用により継続できない人は5%
(Metformin in the treatment of adults with type 2 diabetes mellitus, UpToDate , last updated: Apr 06, 2017.)
 
 
【VitB12欠乏】
腸管のVitB12吸収を最大30%減らす
巨赤芽球性貧血の原因になることは稀
量と期間がリスクに関連
炭酸Ca内服やマルチビタミンによりリスクが減るというStudyあり
(Metformin in the treatment of adults with type 2 diabetes mellitus, UpToDate, last updated: Apr 06, 2017.)
 
 
【乳酸アシドーシス】
症状:食思不振、嘔気、嘔吐、腹痛、倦怠感、過換気、低血圧
リスク:高用量投与、遺伝性糖尿病、腎障害、心不全、敗血症、脱水症
頻度:9/100000人年
(Metformin in the treatment of adults with type 2 diabetes mellitus, UpToDate, last updated: Apr 06, 2017.)
 
診断:≧4mmol/L(36mg/dl) (通常の乳酸アシドーシスと一緒でよさそう)
(Causes of lactic acidosis, UpToDate,last updated: May 28, 2015.)
 
治療:
・重炭酸NaはContraversial。pH7.1-7.15未満の重症なら考慮。
血液透析:重症なら考慮
(Metformin poisoning, last updated: Apr 12, 2017.)
 
 
【腎機能】
〇米国FDA
• Metforminの使用開始前に,患者のeGFRを測定すること。
• eGFRが30 mL/分/1.73 m2 未満の患者では,metforminの使用は禁忌である。
• eGFRが30~45 mL/分/1.73 m2 の患者では,metforminの使用開始を推奨しない。
• Metforminを使用しているすべての患者では,少なくとも年1回はeGFRを測定すること。
高齢者など腎障害の発現リスクの高い患者では,より頻回に腎機能を評価すべきである。
• Metforminを使用中の患者で,eGFRが45 mL/分/1.73 m2 より低下した場合,治療継続のベネ フィット/リスクを評価すること。患者のeGFRが30 mL/分/1.73 m2 より低下した場合,metformin の使用を中止すること。
• eGFRが30~60 mL/分/1.73 m2 の患者では,ヨード造影剤による画像診断検査の前および検査時にmetforminの使用を中止すること。
また,肝疾患・アルコール依存症心不全の既往のある 患者(*),ヨード造影剤の動脈内投与を受ける患者では,metforminの使用を中止すること。
画像診断検査の48時間後にeGFRを再評価すること。腎機能が安定していればmetforminの使用を再開する
 
*肝疾患、アルコール依存症心不全は乳酸アシドーシスのリスクを上げる
禁忌とはなってない
 
〇日本の添付文書
⑴ 腎機能や患者の状態に十分注意して投与の適否や投与量の調節を検討すること。腎機能は、eGFRや血清クレアチニン値等を参考に判断すること。[他社が実施したメトホルミン塩酸塩製剤の国内臨床試験における除外基準は、血清クレアチニン値が、成人では男性1.3 ㎎ /dL、女性1.2㎎ /dL以上、小児では血清クレアチニ ン値1.0㎎/dL超であった]
⑵ 本剤投与中は定期的に、高齢者等特に慎重な経過観察 が必要な場合にはより頻回に腎機能(eGFR、血清ク レアチニン値等)を確認し、腎機能の悪化が認められた場合には、投与の中止や減量を行うこと。
 
 
【造影剤について】
〇日本の添付文書
検査前は一時的に中止(緊急時を除く)
ヨード造影 剤投与後48時間は再開しない
投与再開時には、患者の状態に注意する
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Smartest Family Physician Today's Quiz 5/17/17

上記原文+一部日本語訳を載せてみる

https://www.mdlinx.com/family-medicine/smartestdoc/quizResults.cfm?qeid=F06530E5E30E4D5A8A90840EB59E7220

 

Q1: What would you estimate is the excess weight loss (EWL)% at 24 months following laparoscopic sleeve gastrectomy in adolescents affected by morbid obesity?

病的肥満で腹腔鏡下胃切除術後を受けた青少年の24か月後の超過体重減少率は?

*超過体重減少率(excess weight loss).
術前の体重から理想体重(BMI 25kg/m2)を差し引いた超過体重の減少率を計算したもの。=術前体重-術後体重)/(術前体重-BMI 25の体重)×100

20%
40%
60%
80%

 

Answer Explanation:

60%. Actually, 59.4%. Childhood obesity is an emerging health problem.

小児肥満は最近問題となってきている健康問題。

Iossa A, et al. Eat Weight Disord. 2017 Jan 9. [Epub ahead of print]

 

 

Q2: Laparoscopic sleeve gastrectomy was significantly more effective in non-syndromic vs syndromic obese adolescents. True or False?

腹腔鏡下胃切除術は症候性肥満若年者よりも無症候性の方が効果的だ。

True
False 

 

Answer Explanation:

False. Outcomes were comparable at 24 months.

24か月時点でのアウトカムは同等。

Iossa A, et al. Eat Weight Disord. 2017 Jan 9. [Epub ahead of print]

 

 

Q3: Isocaloric substitution of carbohydrate for fat is associated with greater:

脂肪分を同カロリーの炭水化物に置き換えることは、○○をより大きくする。

Fat loss 脂肪分の減少
Energy expenditure エネルギー消費
Neither answer is correct – no significant difference どちらも違うー大差なし
Both answers are correct 両方正解

 

Answer Explanation:

Both answers are correct. Weight changes are accompanied by imbalances between calorie intake and expenditure.

両方正解。体重変化はカロリー摂取と消費のアンバランスに付随して起きる。

Hall KD, et al. Gastroenterology. 2017;152(7):1718-1727.e3.

 

 

Q4: Your 24-year-old moderately obese patient asks you about vagal nerve blockade (vBloc) therapy. Approximately what percentage EWL would she be likely to achieve a year from now?

中等度肥満の24歳女性から迷走神経遮断(vBloc)療法について聞かれた。1年以内に約何%体重減少できるか?

15% 
30%
50%

 

Answer Explanation:

30%. Actually, 33%. At 12 months, patients undergoing vBloc achieved 33% EWL (11% total weight loss [%TWL]), compared with 19% EWL (6% TWL) in those undergoing sham therapy.

12か月時点でvBlocを受けた患者はEWLが33%、TWL(全体重減少率)が11%
偽療法だとEWL19%、TWL6%。

Morton JM, et al. Obes Surg. 2016;26(5):983-989.

 

 

Q5: Which approach preserves fat free mass (FFM) during weight loss in overweight and obese older adults?

肥満高齢者の体重減少で、除脂肪体重(FFM)を維持するのに最も良いアプローチは?
*FFM=全体重ー脂肪分の体重

Resistance exercise alone レジスタンス運動単独
High protein diet alone 高蛋白食単独
Combined resistance exercise and high protein diet Your Answer それらの組み合わせ
None of the answers is correct
All of the answers are correct

レジスタンス運動:筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動。 スクワット、腕立て伏せ、ダンベル体操など

 

Answer Explanation:

Combined resistance exercise and high protein diet. Intentional weight loss in obese older adults is a risk factor for accelerated muscle mass loss.

両方の組み合わせが有効。高齢肥満患者が故意に体重減少することは筋肉量減少を促進させるリスク。

Verreijen AM, et al. Nutr J. 2017;16(1):10.

 

無脾症患者の発熱 Overwhelming postsplenectomy infection OPSI

Rubin LG, Schaffner WS, Care of the asplenic patient, N EnglJ Med, 2014;371:349-356.
 
無脾症患者の敗血症は死亡率50%を超える
敗血症は無脾症患者の3.2%にみられる(1980-1990年代の報告。平均6.9年追跡調査)
 
無脾症の原疾患:
・脾摘術後:外傷、疾患(遺伝性球状赤血球症、ITP、脾腫、鎌状赤血球症)
・機能性:幹細胞移植後の慢性GVHD(移植片対宿主拒絶反応)、重度セリアック病、未治療HIV
・先天性:単独は稀。先天性心疾患(Ivemark症候群)などと関連
 
無脾症敗血症のリスク因子:
・脾摘原因:低→外傷、中→遺伝性球状赤血球症またはITP、高→鎌状赤血球症、βサラセミア、門脈圧亢進症
・脾摘年齢:高→乳幼児の脾摘または先天性無脾症。
・脾摘後の経過時間:特に若年では脾摘後1年、しかしその後10年間(恐らくは生涯)リスクは高いまま
 
無脾症で感染リスクが上がる菌:
肺炎球菌(最多)、Hib
髄膜炎菌、大腸菌黄色ブドウ球菌→恐らくリスク上がる
Capnocytophaga caniorsusやC.cynodegmi(動物咬傷)
babesia(ダニ咬傷)
Bordetella holmesii(パラ百日咳菌:敗血症、心内膜炎など)
 
敗血症の予防:
・教育→発熱や重度の症状があればすぐに医療機関受診を。
・ワクチン→以下
・予防的抗生剤
適応:5歳未満の無脾症小児、動物咬傷
考慮:5歳以上でも脾摘後1-2年、脾摘後敗血症の既往がある人
 
ワクチン:日本では無脾症の保険適応はPPSV23のみでほかは自費となるかも?
・肺炎球菌
PCV13(プレベナー13®):ワクチン歴なければ年齢に応じ投与。
PPSV23(ニューモバックス®NP):PCV13から8週間空けて投与。脾摘前後2週間は避ける。以降5年毎
・Hib(ActHIB®):ワクチン歴なければ1回投与推奨
髄膜炎菌(Menactra®):PCV13接種と4週間空ける。脾摘前1回接種または脾摘後に8-12週あけて2回接種→5年毎
・インフルエンザ:二次感染予防に。
 
発熱時フロー:

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(上記文献を改変して引用)

川崎病(MCLS:mucocutaneous lymph node syndrome )

川崎病について小児科研修の最後に発表しました。小児科の先生にご意見を頂き、改編したものを下に載せます。ご参考になれば。
 
 【メニュー】
・ポイント
・概念、疫学
・症状、診断
・不全型について
・鑑別
・検査
・重症度
・治療の概要
・コンサルトのタイミング
・予後
川崎病の既往のある患児を診たら
 
 
 
【ポイント】
発熱患者(特に6か月~5歳くらい)の場合、川崎病を鑑別に挙げる
川崎病の治療の目的は冠動脈瘤形成の予防
IVIG投与が遅れないように、適切なタイミングで入院施設を持つ小児科にコンサルト
川崎病の既往のある患児を診たら「川崎病急性期カード」をチェックし、予防接種やライ症候群など注意する。
 
 
 
【概念・疫学】
原因不明の急性小中血管炎
 
好発:多くは4歳未満(80-85%) 6か月-1歳までが最多
有病率:人口10万対215/年
  →5歳までに凡そ100人に1人が罹患(日本)
男女差:男児に多い(1.3-1.5:1)
再発率:2-3%
同胞例:1-2%
 
成人発症例もある(一番高齢発症は68歳!)
Emeline G-M et al, kawasaki disease in adults : report of 10 cases, medicine, volume 89, number 3, May 2010.
 
 
【症状・診断】
・主要症状5/6以上 or 4/6 + 冠動脈瘤 + 他疾患除外
1.5 日以上続く発熱(ただし、治療により5日未満で解熱した場合も含む)
2.両側眼球結膜の充血
3.口唇、口腔所見:口唇の紅潮、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤
4.不定形発疹
5.四肢末端の変化:(急性期)手足の硬性浮腫、掌蹠ないしは指趾先端の紅斑
          (回復期)指先からの膜様落屑
6.急性期における非化膿性頸部リンパ節腫脹
 
①発熱
通常は初発症状 38.5度以上が多い 稽留熱(日内差<1度)
軽症だと5日以内に解熱しうる 3-4週間持続することもある
乳児→機嫌不良 年長児→倦怠、不穏、関節痛など
 
 
②両側眼球結膜充血

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鋭敏な指標で、重要視している小児科医は多いらしい
角膜輪部(中心部)は通常充血しない
眼脂はない~白色少量 
偽膜形成なし 
・診察が難しい場合→保護者に「いつもと比べてどうか」を聞く
溶連菌感染症では通常認めない
・眼脂や偽膜形成がある場合はアデノ、SJS/TENなど考慮
 
*偽膜:フィブリン、壊死を生じた上皮細胞、浸潤細胞(主に好中球)からなり、眼表面の炎症が高度であることを示す

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③口唇・口腔所見

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口唇:口紅を塗ったように赤い 所見強いと腫脹、亀裂→出血
舌:イチゴ舌=発赤腫脹+舌乳頭肥大 溶連菌でも認めうる
口腔:粘膜は全体に発赤。扁桃白苔はほぼなし
・SJS/TEN 口腔内のびらん、潰瘍、水疱
・アデノ、EBV 扁桃白苔
・麻疹 Koplik斑
 
 
④皮膚:不定形発疹(どんな発疹でもとりうる)

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どんな皮疹でもとりうる
典型例:蕁麻疹や多型滲出性紅斑様 大小不同 地図状に部分的に癒合 平坦~やや膨隆の斑状疹
出現しやすい部位:陰部・臍
・出血斑、水疱形成はなし → 水疱やNikolsky現象(正常皮膚が容易に剥離)あればSSSS、SJS/TENも考慮
・SLEなど膠原病、自己免疫疾患も鑑別
 
参考条項→上腕のBCG接種痕:発赤腫脹はかなり特異的 接種後1年間くらいの児に限られる
 
 
⑤四肢

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手掌、足底、指関節部の発赤腫脹、指圧痕なし=硬性浮腫
典型例:光沢が出るほど腫脹 「テカテカパンパン」
→回復期:本来のしわが見られ→その後指尖部と爪床の境界から膜様落屑(発症10-15日)
*DD 感染性心内膜炎→Janeway Osler
 
 
⑥非化膿性頚部リンパ節腫脹 

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出現頻度は70%前後で他に比べて低い(他は90%以上) 
特に1歳以下の乳児には少ない
1個以上 直径1.5cm以上(成人拇指頭大) 集塊として触れる しばしば片側性 
同部の皮膚は発赤 お椀を伏せたように膨隆 圧痛強い
充実性で比較的硬い 波動なし
*鑑別:化膿性リンパ節炎、流行性耳下腺炎、EBV、菊池病など
 
 
 
【不全型川崎病
・主要症状4つ + 冠動脈瘤なし または 主要症状<3 -="" div="">
・四肢、頸症状の頻度低め、口、結膜症状は2/3-3/4の患者でみられる
・乳児のBCG接種部位発赤、年長児の多房性頸部リンパ節腫脹などは特異度高い
・主要症状が少なくても冠動脈障害を起こす例があるため、軽症と捉えないことが大切
 
 
 
【鑑別診断】
風疹、麻疹、多型滲出性紅斑、溶連菌(猩紅熱)、アデノなど
溶連菌・アデノ迅速はチェック
*ウイルス疾患と併発することがあり、上気道症状やウイルスPCR陽性があっても除外できない
 
  川崎病 麻疹 アデノ 猩紅熱
(溶連菌)
エルシニア
年齢 4歳以下 1-6歳 乳幼児~学童 5-10歳 6歳以上
発熱 (+++) (++)
二峰性
(+++) (+~++) (++)
皮膚
粘膜
不定形発疹
眼球結膜充血
紅斑:
第二峰発熱~
→癒合→色素沈着
結膜炎
眼脂
鮮紅色、粟粒大
密集性小丘疹
不定形発疹
結節性紅斑
口唇
口腔
イチゴ舌
口唇紅潮
Koplik斑 咽頭炎
滲出性扁桃炎
口腔蒼白
イチゴ舌
 
関節 時に見られる (-) (-) まれに関節痛 時に
合併 動脈瘤
無菌性髄膜炎
胆管炎胆嚢炎
肺炎中耳炎
結膜炎
重症例では脳炎
肺炎
出血性膀胱炎
髄膜炎
咽頭扁桃炎 腸炎
急性腎不全
検査 白血球増多 白血球減少
麻疹ウイルス抗体
白血球増多
アデノ抗原
白血球増多
ASO/ASK上昇
咽頭培養
白血球増多
便培養
エルシニア抗体
治療 免役グロブリン
アスピリンなど
対症療法 対症療法 ペニシリン 抗菌薬
 
 
  SJS/TEN SSSS リウマチ熱
若年性
関節リウマチ
年齢 3-30歳 1-6歳 5歳以上 2-3歳8-9歳
発熱 (++) (-)~(+) (++) Spike fever
皮膚
粘膜
多形滲出性紅斑
紅斑様皮疹
眼脂水疱びらん
Nikolsky現象
皮膚粘膜移行部に
紅斑
水疱
Nikolsky現象
輪状紅斑
皮下結節
リウマトイド疹
リウマトイド結節
口唇
口腔
点状出血斑
口唇亀裂びらん
口周囲に
放射状亀裂
(-) (-)
関節 時に (-) 一過性移動性 6週間以上持続
合併 二次感染 二次感染 MR、AR
小舞踏病
虹彩炎心膜炎
検査 白血球増多 白血球増多軽度
ブドウ球菌
白血球増多
咽頭培養
ASO/ASK上昇
白血球増多
治療 全身管理
感染予防
スキンケア
原因除去
抗菌薬 ペニシリン
ステロイド
アスピリン
アスピリン
ステロイド
免疫抑制薬
 
 
【検査】
①鑑別目的                               
アデノ、溶連菌迅速 ほか必要に応じ便培養、エルシニア抗体、ASO/ASKなど
②重症度評価目的
血算(白血球分画含む)
TP/Alb AST/ALT/TBil/γGT Na/K/Cl BUN/Cre
NTpro-BNP → 川崎病の参考所見
ESR
PT/APTT/Dダイマー/FDP → 血管炎であることの参考所見
尿定性/沈査 → 無菌性膿尿も参考所見になる
 
 
【重症度 群馬スコア 】
2点 Na≦133mEq/l
2点 AST≧100U/l
2点 診断(治療開始)病日≦第4病日 → 早い段階で診断がつく=それだけ症状が強い
2点 好中球≧80%
1点 CRP≧10mg/dl
1点 Plt≦30万/μl
1点 年齢≦12 months
→5点以上で、IVIG不応例に対して感度76%特異度80%
 
 
【治療概要】
目的→冠動脈瘤の予防(第7-9病日あたりが一番汎冠動脈炎の炎症が強い?)
 
・静注用免疫グロブリン(IVIG)投与                       
 冠動脈病変発症率は25%→5%に減少(第7病日以前にIVIG投与開始が望ましい)
 
・抗血小板薬投与(アスピリンが第一選択)
 血栓形成予防
 
↓IVIG不応例
ステロイド(パルス)、血漿交換、生物製剤、免疫抑制剤
 
 
 
【紹介のタイミング】
(非医学的な要因、全身状態不良は除く)
 
川崎病だとしたら、第7病日までにはIVIG開始したい              
→遅くとも、第5-6病日に小児科で診断できるようにしたい
 
①発熱≧5日:
 他に確定的な診断がない
 診断はついているが川崎病併発も疑われる
 
②発熱<5日:
 他の5症状のうち4-5症状ある
 1-3/5症状でもBCG接種痕発赤などあり疑わしいとき
 
*来院前の症状も確認!
症状が出たり引いたりすることがあり、来院時に必ずしも揃ってないこともある
*迷ったら、採血値なども参考になる(CRP上昇、Na低下、Alb低下など)
 
 
【予後】
→14%が冠動脈瘤
→約半数は自然消退
 稀に破裂
 2%が虚血性心疾患
 1%が心筋梗塞
 0.5%が突然死
若年成人の虚血性心疾患を見たら、川崎病の病歴(KD既往、不明熱など)を聴取!
 

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川崎病の既往のある患児を診たら】
⓪治療内容の確認
川崎病急性期カード」が母子手帳にあれば見せてもらう。

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アスピリン(ASA)投与している児の場合
・インフルエンザ,水痘罹患時にアスピリン投与はライ症候群の発症と関連あり
*ライ症候群:急性脳症と肝脂肪変性,死亡や後遺症発生のリスク高い
(低用量投与時のリスクは不明確)
 
・ASA投与中に疑わしい症状が出現した場合
→一時的に中止することが多い。
 
特にCALある場合は、入院中の担当医に相談 電話問い合わせ
 
②IVIG投与していた児の注意
○予防接種
MR・水痘・おたふく(=非経口生ワクチン)
 →6か月空ける(一時的にウイルス血症を惹起。抗体つきにくい)
他のワクチン
→通常通り接種可(急がない場合は、2か月を過ぎたあたりで行うのが無難)
 
献血→不可(現在の検査法では検出できない未知のウイルス感染の可能性)
                     http://www.jrc.or.jp/donation/about/refrain/detail_05/
 
③冠動脈瘤を形成した児の場合
・小さいほど自然退縮しやすく、約半数が1-2年で退縮
・巨大瘤は自然退縮しにくい
・胸痛などで来院した場合は、ACSも考慮
 
 
【参考文献】
・Robert S, Kawasaki disease: Epidemiology and etiology, UpToDate, last updated Apr 01, 2016.
・Robert S, Kawasaki disease: Clinical features and diagnosis, UpToDate, last updated Feb 22, 2016.
・Aaron S, Diagnosis and Management of Kawasaki Disease, Am Fam Physician. 2015 Mar 15;91(6):365-371.
・中野 康伸, 自信がつく! Dr.中野のこどものみかた(上巻)ケアネットDVD, 2004, ケアネット.
川崎病(MCLS、小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群)診断の手引き (厚生労働省川崎病研究班作成改訂5版)
石井正弘, 五十嵐隆, 川崎病のすべて (小児科臨床ピクシス), 全訂新版, 2015, 中山書店.
・Jessica LT et al, Concurrent Respiratory Viruses and Kawasaki Disease, Pediatrics, September 2015, VOLUME 136 / ISSUE 3.
・Jartti T, Lehtinen P, Vuorinen T, Koskenvuo M, Ruuskanen O. Persistence of rhinovirus and enterovirus RNA after acute respiratory illness in children. J Med Virol. 2004;72(4):695–699pmid:14981776
・塚田瑞葉ら, 両側冠動脈瘤を合併した成人発症型川崎病の1例, 心臓 vol.45 No.11(2013).
・Emeline G-M et al, kawasaki disease in adults : report of 10 cases, medicine, volume 89, number 3, May 2010.

クループ

診察室で「ケンケン」と聞こえたら真っ先に考えるべき疾患でしょうか。

咳をあまりしてくれない子もいて、そういう子は泣いた後に「ヒュオッ」と息を吸うのがクループっぽいと小児科の先生が教えてくれました。

 

 
【定義、特徴】
特徴:喉頭、声帯下の炎症によるStridor、咳、嗄声などの呼吸障害
病因:ウイルスが多く、細菌は二次性。パラインフル1が最多、ほかRSウイルス、インフルエンザ
好発:6-36か月に最多、春から初秋
 
*好発年齢以外なら器質的疾患考慮
6ヶ月未満 血管輪など
学童以降 ポリープ、腫瘍など
 
 
【臨床症状、評価、診断】
鼻過敏、鼻閉、咳など上気道症状から始まり徐々に増悪
12-48時間以内に発熱(平熱例もある)、嗄声、犬吠咳(けんばい)、stridor
 
嗄声や犬吠咳:急性喉頭蓋炎、異物、血管神経浮腫では通常なし
発熱:ない場合は痙攣性クループ、異物、血管神経浮腫など
嚥下困難:急性喉頭蓋炎、異物など
流涎:扁桃周囲・咽後膿瘍、咽頭後壁蜂窩織炎喉頭蓋炎。あるスタディでは喉頭蓋炎の80%、クループの10%にみられた。
咽頭痛:喉頭蓋炎で60-70%、クループで10%
大泣き後の吸気時のヒュー音:名称がなさそうだけど、小児科drによると有用とのこと
 
○診断
犬吠様咳嗽やStridor、流行状況などから総合判断
              
○診察
できれば泣かさず診察(浮腫悪化の懸念)
咽頭や鼓膜などの診察は場合によっては省略したり後で行う
 
○鑑別
喉頭蓋炎:発熱、ぐったり、sniffing positionなど
気管異物 5killer sore throat 血管神経浮腫 上気道損傷 上気道奇形 など
 
○レントゲン:特に異物の除外に有用

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(文献2より)Steeple sign(上気道狭窄):正常児でも呼吸の相によっては見えることあり 
 

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(文献2より)矢印:声帯下狭窄 矢頭:下咽頭の拡張
 
youtubeで典型的な犬吠様咳嗽のビデオがあります。 
 
【重症度】The Westley croup score
項目\点数 0 1 2 3 4 5
意識 正常(睡眠含む)         失見当識
チアノーゼ なし       興奮時 安静時
Stridor なし 興奮時 安静時      
Air入り 正常 減少 著明減少      
陥没呼吸 なし 軽度 中等度 高度    
 
0-2点:軽症
3-7点:中等度
8-11点:重症
12-17点:切迫呼吸不全
→前駆症状として倦怠感、著明な陥没呼吸、呼吸音減弱、意識レベル低下、熱以上の頻脈、チアノーゼや蒼白
 
 
【マネジメント】
①軽症例:デキサメタゾン→効果遅い、再発予防目的
・経口のデキサメタゾンの単回投与:0.15~0.6㎎/㎏ 0.1mg/ml
(文献1では同量のベタメタゾンや、筋注静注も可となっている。)
・軽症ではエピネフリン(ボスミン®)吸入は文献1では推奨なし
・湿気の吸入:メタ解析で効果ないが、快適かもしれない。使っても変わらなければ中止。
 
②中等~重症:ボスミン®吸入+デキサメタゾン
・ボスミン外用液0.1%:生食2mLに溶かして15分で吸入 効果早い
(文献1は0.2ml、文献2は0.05mL/kg(最大0.5mL) 現在の勤務先は0.5mlに統一されてる)
・15-20分毎に繰り返し投与OK、2-3時間以内に3回以上投与するなら心電図モニターするべき
 
デキサメタゾンやリンデロンのシロップ剤は、甘ったるくて量も多くて飲むのは大変。
 細粒があればそちらの方が飲みやすいかも
*ボスミンや加湿でかえって泣いたりして悪化することもあるため、軽症でやるかどうかは微妙
 
 
【参考】
1)横田俊平, 他, 小児の薬の選び方使い方, 改訂第4版, 2015, 南山堂.
2)Charles RW, Croup: Clinical features, evaluation, and diagnosis, UpToDate, last updated Dec 15, 2015.
3)Charles RW, Croup: Approach to management, UpToDate, last updated Apr 17, 2015.