家庭医療専門医の勉強記録

医学・非医学問わず、学んだことを投稿しています。内容の間違いなどありましたらご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

爪形成症 Onychogryphosis

療養病棟とか施設とかに行くと、ほぼ必ずいらっしゃる爪がものすごく変形している方たち。
実はこれ、立派な病名がついてまして、
 
爪形成症 Onychogryphosis
 
といいます。
というわけで、まとめ。
 
【Onychogryphosis 爪形成症】
「羊の角」「カキ」に例えられる。
最初は上向き→その後外側へ 
*最初外側に行く場合は先天性の配置異常(malalingnment)かも
原因:爪を切る回数が少ない(最多)、外傷、爪床肥大、外反母趾など骨性の変形
(真菌症との関連は記載がない)
治療:切ったり削ること
 
(Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2005 Nov-Dec;71(6):386-92.)
 
 
 
図は Rich.P, Overview of nail disorders, UpToDate, last updated: Aug 29, 2017. より引用
 
 

お勧め書籍 病棟~診療所、在宅ベースの総合診療医向け

対象は病棟~診療所、在宅ベースの総合診療医です。
産婦人科系や集中治療系はちょっと弱いと思います。
 
独断と偏見で選んでいます。経済的なCOIはありません。
名前が間違ってたらすみません。
 
 
【全般】
・Hospitalist
ほぼ全部持ってます。
 
・内科外来マニュアル
実はそんなに使ってませんが・・・手元にあると安心。
 
・内科診療フローチャート
・内科診断リファレンス
必須。
 
・総合内科病棟マニュアル
・ポケットレファラン
病棟マニュアルの方がやや好みに近い。
 
・病気がみえる
病態とか解剖生理とか基本情報に優れてます。診断や治療は参考程度に。
 
Gノート増刊 Vol.4 No.2 これが総合診療流! 患者中心のリハビリテーション〜全職種の能力を引き出し、患者さんのQOLを改善せよ!
リハビリも必須。
 
誤嚥性肺炎の予防とケア
・口から食べる幸せをサポートする包括的スキル KTバランスチャートの活用と支援
摂食嚥下障害への包括的アプローチを学ぶ本。総合診療医だけでなく、多職種で読むべき。
 
・外来診療ドリル
問題集。
 
【消化器】
・肝炎診療バイブル
肝障害を極める。Generalistには内容が深すぎるかもですが
 
内視鏡をする人の診断系の本はどれがいいでしょう?
 
 
【循環器】
・3秒で読める心電図
すごくわかりやすいです
 
 
【内分泌代謝
甲状腺疾患の診かた考えかた
「診かた考えかた」シリーズが好きな先輩から(^^)/
 
 
【腎】
・CKDguide
2012が最新?よくまとまっていて読みやすいです
 
・レジデントのための血液透析患者マニュアル
他の先生にお勧めされました
 
 
膠原病
・すぐに使えるリウマチ膠原病診療マニュアル
必須。
 
・レジデントのためのアレルギー疾患診療マニュアル
若干読みづらいけど、他にアレルギーの本を知らないので。
 
 
【血液】
・レジデントのための血液診療の原則
読みやすいです。
 
 
感染症
・レジデントのための感染症診療マニュアル
感染症レジデントマニュアル
上が必須、下はその簡易版みたいな。
 
・抗菌薬の考え方使い方
はじめの一歩の発展形という感じ
 
・絶対わかる抗菌薬はじめの一歩
基本。
  
 
【呼吸器】
・レジデントのための呼吸器診療マニュアル
一応持ってます
 
 
【神経】
必須と思います。
 
・コウノメソッド流臨床認知症
一読の価値はあるかも・・・?
 
・ねころんで読めるてんかん診療
・「てんかん」のことがよくわかる本
上は医学書、下は一般書です。著者は両方同じ。
 
 
【救急】
・急性中毒診療マニュアル
・考えるER サムライプラクティス
・必勝!気道管理術
・当直御法度
・マイナーエマージェンシー
・ドクター夏井の外傷治療「裏」マニュアル
・ひとりでこなす外科系外来処置ガイド
・Step beyond residentシリーズ
どれも割とよく使ってます。
 
 
【小児科】
・HAPPY
必須。やや救急寄り?
 
・小児の薬の選び方使い方
HAPPYよりも外来向き。抗生剤の選択は他の本を読んだ方がいいと思います
 
・予防接種コンシェルジュ
子どものワクチンやるなら必須
「know VPD」ホームページと合わせて。
 
 
・妊娠と授乳
処方時にあると安心。成育医療センターのホームページでも割と代用可能
 
 
【眼科】
・ジェネラリストのための眼科診療ハンドブック
たまに使います
 
 
プライマリケアで一生使える耳鼻咽喉科診療
SASがないのが残念ですが、わかりやすいです。
 
 
【整形外科】
・手足腰診療スキルアップ
必須。解剖の本が一緒にあった方がいいと思います
 
 
【精神科】
・ACP内科医のための「こころの診かた」
CareneTVの動画がお勧め
 
 
【皮膚科】
・平本式 皮膚科虎の巻
DVDです。すごく役に立ちます。
 
 
プライマリケア医のためのLUTS診療
ないよりは良いかも
 
 
【ほか】 
・救急ICU薬剤ノート
希釈法も載っていて実践的
 
・LABORATORY MEDDICINE
検査異常の読み方が載ってる
 
・ネッター
解剖の本も必須です
 
・人体の正常構造と機能
解剖+生理の本 読みやすい
 
 
2017/11/07作成
2018/6/6更新
 

包茎 亀頭包皮炎 陰茎 balanoposthitis

亀頭:陰茎先端の丸くなった部分
包皮:亀頭を包み込む陰茎体部の皮膚のたるみ
 
 
尿閉→解除が優先
6歳以上→KOH、培養、STD評価
おむつ皮膚炎→カンジダ亀頭包皮炎
不衛生あり→非特異的亀頭包皮炎
薬使用歴あり→固定薬疹
過剰洗浄→刺激性接触性亀頭包皮炎
GAS暴露や接触→GAS亀頭包皮炎
尿道分泌→STD、性的虐待など
尿道分泌なし→細菌性亀頭包皮炎など
 
 
1/3は原因不明
一番Commonなのはカンジダ
 
 

 
 
【非特異的】
半身浴などでペニスを温める
適切な衛生状態にする
包皮内への石鹸、パウダーなどは避ける
抗生剤軟膏(ゲンタシンとか?リンデロンVGみたいな合剤でも良いみたい)→感染予防になるかもと記載あり
 
【刺激性接触性】
包皮内への石鹸、パウダーなどは避ける
ロコイド軟膏など
 
 
 
【参考文献】
UpToDate Balanoposthitis: Clinical manifestations, diagnosis, and treatment last updated:Sep 19, 2017.
Medscape Balanoposthitis Updated: Jul 13, 2017
 
 
 
 

メトホルミン まとめ 糖尿病 ビグアナイド

【要点】
1日1回投与でもいい(保険が通るかは不明)
消化管副作用は一過性
長期投与でVitB12欠乏になりうる
乳酸アシドーシスは稀だが症状は非特異的なため、疑ったら採血を。
乳酸アシドーシスハイリスク患者は投与禁忌(重度な肝障害、CKD、心不全アルコール依存症など)
eGFR<30は禁忌
eGFR30-45なら新規投与はしない
eGFR>45ならOK(添付文書上Creが男≧1.3、女≧1.2は控える方が安全かも)
造影剤投与時は添付文書のルールに従う(投与前中止、投与48時間以降に再開)
 
 
【機序】

f:id:kateiiryou:20170612193122p:image

(医療情報科学研究所, 病気がみえる vol.3 糖尿病・代謝・内分泌, 第3版, 2012, メディックメディア.)
 
 
【用法用量】
500㎎1日2回または850㎎1日1回で開始
(Metformin: Drug information, UpToDate, Accessed June 11 2017.)
 
少量250-500㎎1日1回から開始
1日2-3回に分けて処方すると飲み忘れが多くなる。そのようなときには1日1回で服用
(金城光代, 他, ジェネラリストのための内科外来マニュアル,第2版, 2017, 医学書院.)
 
*日本の添付文書では1日2-3回分服
 
 
【消化管副作用】
口の中で鉄の味がする、食思不振、嘔気、腹部不快感、下痢
多くは軽症、一過性、可逆性
これらの副作用により継続できない人は5%
(Metformin in the treatment of adults with type 2 diabetes mellitus, UpToDate , last updated: Apr 06, 2017.)
 
 
【VitB12欠乏】
腸管のVitB12吸収を最大30%減らす
巨赤芽球性貧血の原因になることは稀
量と期間がリスクに関連
炭酸Ca内服やマルチビタミンによりリスクが減るというStudyあり
(Metformin in the treatment of adults with type 2 diabetes mellitus, UpToDate, last updated: Apr 06, 2017.)
 
 
【乳酸アシドーシス】
症状:食思不振、嘔気、嘔吐、腹痛、倦怠感、過換気、低血圧
リスク:高用量投与、遺伝性糖尿病、腎障害、心不全、敗血症、脱水症
頻度:9/100000人年
(Metformin in the treatment of adults with type 2 diabetes mellitus, UpToDate, last updated: Apr 06, 2017.)
 
診断:≧4mmol/L(36mg/dl) (通常の乳酸アシドーシスと一緒でよさそう)
(Causes of lactic acidosis, UpToDate,last updated: May 28, 2015.)
 
治療:
・重炭酸NaはContraversial。pH7.1-7.15未満の重症なら考慮。
血液透析:重症なら考慮
(Metformin poisoning, last updated: Apr 12, 2017.)
 
 
【腎機能】
〇米国FDA
• Metforminの使用開始前に,患者のeGFRを測定すること。
• eGFRが30 mL/分/1.73 m2 未満の患者では,metforminの使用は禁忌である。
• eGFRが30~45 mL/分/1.73 m2 の患者では,metforminの使用開始を推奨しない。
• Metforminを使用しているすべての患者では,少なくとも年1回はeGFRを測定すること。
高齢者など腎障害の発現リスクの高い患者では,より頻回に腎機能を評価すべきである。
• Metforminを使用中の患者で,eGFRが45 mL/分/1.73 m2 より低下した場合,治療継続のベネ フィット/リスクを評価すること。患者のeGFRが30 mL/分/1.73 m2 より低下した場合,metformin の使用を中止すること。
• eGFRが30~60 mL/分/1.73 m2 の患者では,ヨード造影剤による画像診断検査の前および検査時にmetforminの使用を中止すること。
また,肝疾患・アルコール依存症心不全の既往のある 患者(*),ヨード造影剤の動脈内投与を受ける患者では,metforminの使用を中止すること。
画像診断検査の48時間後にeGFRを再評価すること。腎機能が安定していればmetforminの使用を再開する
 
*肝疾患、アルコール依存症心不全は乳酸アシドーシスのリスクを上げる
禁忌とはなってない
 
〇日本の添付文書
⑴ 腎機能や患者の状態に十分注意して投与の適否や投与量の調節を検討すること。腎機能は、eGFRや血清クレアチニン値等を参考に判断すること。[他社が実施したメトホルミン塩酸塩製剤の国内臨床試験における除外基準は、血清クレアチニン値が、成人では男性1.3 ㎎ /dL、女性1.2㎎ /dL以上、小児では血清クレアチニ ン値1.0㎎/dL超であった]
⑵ 本剤投与中は定期的に、高齢者等特に慎重な経過観察 が必要な場合にはより頻回に腎機能(eGFR、血清ク レアチニン値等)を確認し、腎機能の悪化が認められた場合には、投与の中止や減量を行うこと。
 
 
【造影剤について】
〇日本の添付文書
検査前は一時的に中止(緊急時を除く)
ヨード造影 剤投与後48時間は再開しない
投与再開時には、患者の状態に注意する
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Smartest Family Physician Today's Quiz 5/17/17

上記原文+一部日本語訳を載せてみる

https://www.mdlinx.com/family-medicine/smartestdoc/quizResults.cfm?qeid=F06530E5E30E4D5A8A90840EB59E7220

 

Q1: What would you estimate is the excess weight loss (EWL)% at 24 months following laparoscopic sleeve gastrectomy in adolescents affected by morbid obesity?

病的肥満で腹腔鏡下胃切除術後を受けた青少年の24か月後の超過体重減少率は?

*超過体重減少率(excess weight loss).
術前の体重から理想体重(BMI 25kg/m2)を差し引いた超過体重の減少率を計算したもの。=術前体重-術後体重)/(術前体重-BMI 25の体重)×100

20%
40%
60%
80%

 

Answer Explanation:

60%. Actually, 59.4%. Childhood obesity is an emerging health problem.

小児肥満は最近問題となってきている健康問題。

Iossa A, et al. Eat Weight Disord. 2017 Jan 9. [Epub ahead of print]

 

 

Q2: Laparoscopic sleeve gastrectomy was significantly more effective in non-syndromic vs syndromic obese adolescents. True or False?

腹腔鏡下胃切除術は症候性肥満若年者よりも無症候性の方が効果的だ。

True
False 

 

Answer Explanation:

False. Outcomes were comparable at 24 months.

24か月時点でのアウトカムは同等。

Iossa A, et al. Eat Weight Disord. 2017 Jan 9. [Epub ahead of print]

 

 

Q3: Isocaloric substitution of carbohydrate for fat is associated with greater:

脂肪分を同カロリーの炭水化物に置き換えることは、○○をより大きくする。

Fat loss 脂肪分の減少
Energy expenditure エネルギー消費
Neither answer is correct – no significant difference どちらも違うー大差なし
Both answers are correct 両方正解

 

Answer Explanation:

Both answers are correct. Weight changes are accompanied by imbalances between calorie intake and expenditure.

両方正解。体重変化はカロリー摂取と消費のアンバランスに付随して起きる。

Hall KD, et al. Gastroenterology. 2017;152(7):1718-1727.e3.

 

 

Q4: Your 24-year-old moderately obese patient asks you about vagal nerve blockade (vBloc) therapy. Approximately what percentage EWL would she be likely to achieve a year from now?

中等度肥満の24歳女性から迷走神経遮断(vBloc)療法について聞かれた。1年以内に約何%体重減少できるか?

15% 
30%
50%

 

Answer Explanation:

30%. Actually, 33%. At 12 months, patients undergoing vBloc achieved 33% EWL (11% total weight loss [%TWL]), compared with 19% EWL (6% TWL) in those undergoing sham therapy.

12か月時点でvBlocを受けた患者はEWLが33%、TWL(全体重減少率)が11%
偽療法だとEWL19%、TWL6%。

Morton JM, et al. Obes Surg. 2016;26(5):983-989.

 

 

Q5: Which approach preserves fat free mass (FFM) during weight loss in overweight and obese older adults?

肥満高齢者の体重減少で、除脂肪体重(FFM)を維持するのに最も良いアプローチは?
*FFM=全体重ー脂肪分の体重

Resistance exercise alone レジスタンス運動単独
High protein diet alone 高蛋白食単独
Combined resistance exercise and high protein diet Your Answer それらの組み合わせ
None of the answers is correct
All of the answers are correct

レジスタンス運動:筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動。 スクワット、腕立て伏せ、ダンベル体操など

 

Answer Explanation:

Combined resistance exercise and high protein diet. Intentional weight loss in obese older adults is a risk factor for accelerated muscle mass loss.

両方の組み合わせが有効。高齢肥満患者が故意に体重減少することは筋肉量減少を促進させるリスク。

Verreijen AM, et al. Nutr J. 2017;16(1):10.