家庭医療専門医の勉強記録

医学・非医学問わず、学んだことを投稿しています。内容の間違いなどありましたらご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

熱傷 まとめ

9か月の男児。掘りごたつに落っこちてしまったとのことで来院。
顔面(耳介、鼻翼、頬部、鼻唇溝)に表皮剥離と一部水疱形成あり
Ⅱ度熱傷の診断
少しゴミがついていたので、生食で洗浄し、貼れる部分はワセリンガーゼ、貼れない部分はワセリン頻回塗布を指示した。
ガーゼは剥がれてしまうので、包帯で被覆した。
 
熱傷の診療経験がほぼないので、まとめてみました。
反省点としては、
・洗浄前にキシロカインゼリーなどで局所麻酔するべきだった(どっちにしても泣いただろうけど)
・ワセリンガーゼではなく、モイスキンパッドなどの方がくっつきやすかったかも
というところです。
 
 

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(参考文献1より)
 
【メニュー】
麻酔
創傷の洗浄
創傷の被覆=ドレッシング
感染予防
疼痛コントロール
 
【麻酔】
洗浄が必要なときは、局所または全身麻酔
キシロカインゼリーなど?
 
【洗浄】
化学熱傷や異物汚染があれば洗浄を行う
通常の熱傷であれば洗浄不要
★直径2㎝以上の水疱膜は徹底的に除去する 感染予防

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(参考文献1より)
無鉤鑷子や細いペアンで肉芽と膜の間を滑らせるように入れる。
全て除去しなくてもよく、何か所かドレナージ用の穴をあけるイメージ。
 
【被覆】
・広範囲熱傷
食品包装用ラップ(サランラップでもクレラップでもよい。もちろん,ビニールの風呂敷だっていい)で創面を覆う
ラップの上はガーゼか紙おむつで覆い,浸出液を吸収する。
ラップはアセモを作りやすいので,傷の周りの皮膚をよく洗うようにしたほうが安全。
*ラップは滅菌する必要はない(ラップの製造過程から考えて,市販のラップに細菌が付着している可能性はほとんどゼロ)。
*OpWT(穴あきポリ袋+紙おむつ)で創面を覆うのも効果的。ラップ単独より汗疹ができにくいのがメリット。
OpWTについては下記の鳥谷部先生のサイトを参照。
 
・顔面の熱傷ではデュオアクティブ(キズパワーパッド)が有用。モイスキンパッドなどでもよい
・四肢や体幹の熱傷ではプラスモイストで創面を覆うだけでよい。
プラスモイストは一部の調剤薬局やインターネットで購入できる。面積が広い場合には最も安価なプラスモイストTOPがいい。
・ラップで治療をしていて汗疹ができたら,汗疹の部分をよく洗ってプラスモイスト(プラスモイストTOP)で覆うと数日でよくなるはず。
 
・ワセリン塗布の併用で、さらに疼痛緩和に効果的。
 
*被覆しにくい部位(顔面など)
頻回のワセリン塗布で対応
 
 
【感染予防】
基本的に予防的投与は不要
乳幼児に限り、予防的投与を行うという選択肢もある?
 
【疼痛対策】
受傷直後には冷却が有効、それ以降はあまり有用でない
創面の乾燥を防ぐのが大事
 
 
【参考文献】
1)夏井睦, 新しい創傷治療:実際の治療例, 新しい創傷治療,http://www.wound-treatment.jp/title_tiryou.htm, Accessed 2015/11/02
2)夏井睦, ドクター夏井の外傷治療「裏」マニュアル~すぐに役立つHints&Tips~, 2007 , 三輪書店.