先日初診外来をしていたときのこと。
中年の男性が、現場関係の仕事中に鉄の扉に指を挟まれ病院に駆け込んできました。
左第3指のDIP~PIP関節の腹側から背側にかけて深く抉れるような創あり。
拍動性出血あり、血管は同定できず。
一応指を動かすことは可能で触覚もあり(といっても出血がひどかったのでしっかり評価はしてませんが)血色は悪くない。
出血は圧迫止血では止まる気配がなく、電気メスで焼灼しようとも思ったんですがタニケットを巻いたら何とか止血。
上級医とも相談したんですが、下手に組織を傷つけるよりは、と思いそれ以上の処置は行いませんでした。
で、勤務施設から高次病院までは救急車で1時間弱かかる距離。
タニケットってそんなに巻いてていいんだっけ?と思い文献検索しました。
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出血のコントロール・圧迫止血
・血管のクランプ:しっかり見えてない状態で行うのはNG
・タニケット:よく使用される
*電気メスに関しては記載が見当たらず
UpToDate Severe extremity injury in the adult patient last updated: Jun 16, 2017.
タニケットの合併症
機械的圧迫による直接障害や虚血と、再潅流によるもの
局在性
筋障害
神経障害
血管障害
皮膚障害
タニケット不全(出血)
タニケット痛
全身性
心血管:血流低下によるショック・MI、再潅流による心不全など起きるかも
肺:タニケット解放時に呼気CO2↑するかも
神経:PaCO2上昇で脳血流増加し脳の障害を助長するかも
血液:DVTはタニケットの有無で不変。過凝固状態→線溶系亢進→タニケットオフ後に出血助長するかも
使用時間
可能な限り短時間で!
2時間以上使用する場合には、1-2時間毎に10-15分程度エアを抜くこともある
エビデンスはなし
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よく考えたら整形のオペとかで使われてるし、おそらく1時間くらいは基本的には問題ないんでしょう。
全身性の合併症があるとは想定してませんでしたが、あくまで「病態生理学的にはこういうことが起こりうる」みたいな書き方だったし頻度まではわかりません。
かなりビビった症例でした。