家庭医療専門医の勉強記録

医学・非医学問わず、学んだことを投稿しています。内容の間違いなどありましたらご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

2023-01-01から1年間の記事一覧

HOTに共感、COOLに共感。【モラルの起源-実験社会科学からの問い】

【モラルの起源-実験社会科学からの問い】 本ブログでは、本書の概要をざっくり述べた後、本書で触れられている「ゴシップ」と「共感」について私見を書いています。 本書の概要 本書は、「人の社会を支える」人間本性を、実験社会科学を用いて検討した本で…

【観光客の哲学】大切な人を失った後どう生きるか

こないだ、北海道マラソンに出場した。僕にとってそこまでの遠出はかなり久々で、マラソン後には少しだけ観光する時間もあった。(結局ほとんどしなかったが)でも、僕は正直言って観光がそこまで好きじゃない。観光地をただ見るだけだとさほど楽しめない気…

【どもる体】吃音とこらだとデカルトと無我

こんな人にオススメ ・吃音の当事者や、その周りの人・「体って意外と思った通りに動かせないな」と思う人・(デカルト信奉者で心身二元論が真実だと思う人)・(アンチデカルトで心身一元論こそが真実だと思う人) 要約と感想 本書には2つの目的がある。・…

【居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書】

こんな人にオススメ ・子育て中の方、教育関係の方、医療・介護・福祉関係の方、など「ケアに関わる人」。ケアは実はすべての人に関わるので(気づきにくいのも特徴)、そういう意味では皆さんに広くオススメでもあります。・國分功一郎さんの本が好きな人。…

愛し(かなし)【私とは何か 「個人」から「分人」へ】

「マチネの終わりに」などで有名な小説家の平野啓一郎が、書いた本。「分人」という概念は非常にわかりやすく、よく引用している。 https://bc-liber.com/blogs/7efcfe4e4e1d 摂食障害の分人【なぜふつうに食べられないのか: 拒食と過食... こば 08/09 13:41…

摂食障害の分人【なぜふつうに食べられないのか: 拒食と過食の文化人類学 :ブログ振り返り】

https://bc-liber.com/blogs/87397d720dad リベログ 【人類学、interesting。】なぜふつうに食べられな... こば 10/02 22:32 約2年前のブログ。我ながら、結構よくまとまっていると思う(自画自賛)ので、ブログ内容については特に追加することはあまりない…

【聖なるズー】「*注意」参照

*注意 本書は「動物性愛」というテーマを扱っています。動物性愛とは、簡単に言えば「動物を性的な対象として捉える」ことであり、これだけでも人によっては嫌悪の対象となりうるテーマだと思います。このブログでもそうしたセンシティブなことを取り扱いま…

勉強して、損する。【勉強の哲学:ブログ振り返り】

https://bc-liber.com/blogs/9912460001e6 読書ログ「勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版 (文... こば 09/03 21:08 過去のブログを振り返るシリーズ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー改めてブログを見返すと、ボケやツッコミというワードにば…

相互知識のパラドックスと博打の話【言語学バーリ・トゥード】

https://www.amazon.co.jp/dp/B09DCF7HK6?tag=booklogjp-default-22&linkCode=ogi&th=1&psc=1 「言語学」と冠しつつも、ネタが8割くらいの知的おふざけ本。面白さもありつつ、なるほどと思わされるところもある。印象的だったところを紹介。ーーーーーーーー…

【ケアの継続性が、家庭医や治療関係に与える感情的な影響】

Emotional effects of continuity of care on family physicians and the therapeutic relationship「ケアの継続性が、家庭医や治療関係に与える感情的な影響」 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22337743/ Emotional effects of continuity of care on fami…

【旋回する人類学】おせっかいとケア

本書は、人類学の学説史を6つのテーマ(人間の差異、他者理解、経済行動、秩序、自然と宗教、病と医療)毎にまとめた本である。 タイトルの「旋回する人類学」には、転回をくり返してきた人類学の変遷と、そんな変化の前後をぐるぐるめぐりながら人類学の現在…

【パイナップル巨人軍】大きな構図からはみ出るもの/想像と、わかる/ベイスボゥルに生きる

昨日のゆる言語学ラジオで取り上げられていた本。面白そうだしKindleで買えたので、さっそく読んでみた。 https://youtu.be/67x291qibT8 巨大倉庫から奇書を探し出せ!キショ奇書インディ・ジョーンズ【in バリューブックス】#236 【VALUE BOOKS 買取強化キ…

【村の社会学】「田舎の人が親切」な理由 / 田を分けるのは「田分け者」 / 日本に「自然」はない / かけがえのない村人 etc

本書はサブタイトルを「日本の伝統的な人づきあいに学ぶ」として、生きるための知恵のうち、「人づきあい」を軸にして考えることにしました。ただ、人づきあいは人間が生きるための組織で(村もそのような組織のひとつです) 独立して存在しているわけではあ…

一隅を照らす。【虐殺器官】(ネタバレあり)

ハーモニーの作者、伊藤計劃さんのSF小説。漫画版、劇場版アニメもあり。 9・11を経て、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。 米軍大尉クラヴィ…

「人それぞれ」じゃ良くない話【「みんな違ってみんないい」のか? ――相対主義と普遍主義の問題】

哲学とか、歴史とか、いろいろ学ぶと「絶対的に正しいものなんてないんだなぁ」と思う。そうすると、「人それぞれでよくね?」(=相対主義)と考えるようになる。でも、「人それぞれ」で済ませていいことと、困ることがある。 本書はそんな「人それぞれ」を…

【ピダハン】アマゾン先住民の本を読んだら、瞑想したくなった話

本書を知ったきっかけはゆる言語学ラジオ。ゆる言語学ラジオでの本書紹介(”なろう系小説”風)がわかりやすい。 福音派としてキリスト教を、未開のピダハンというアマゾンの奥深くに住む少数部族に勧めに行こうと思ったら、そいつらの言語は数もなくて色もな…

【残念な政治家を選ばない技術】選挙リテラシーを上げよう

以前、選挙に関するブログを書いた。 https://bc-liber.com/blogs/25ae5ce816fa リベログ 【緩募】選挙の情報源知りたいです こば 04/05 19:45 今回は、そもそも選挙のことをよくわかってないな、ということで手に取った本の紹介。著者は選挙ドットコムを運…

【大聖堂】名前と食事の謎

短編集ですが、表題作の大聖堂しか読んでません。 【著者について】 1938年オレゴン州生まれ。1983年に「大聖堂」を刊行。1988年肺癌にて死去。 第二次世界大戦の直前に生まれ、物心つくころにはすでに戦争は終わっている世代かな。 【登場人物】 主な登場人…

ルックバック【ブログを振り返るブログ】(ネタバレあり)

https://www.amazon.co.jp/dp/B09BDZ5RSJ?tag=booklogjp-default-22&linkCode=ogi&th=1&psc=1 過去のブログを振り返るブログ。 https://bc-liber.com/blogs/3bda8d3706d5 「ルックバック 藤本タツキ」読み終えた衝動のまま・・・駄文です こば 09/04 18:06 …

電子書籍厳禁。【逆転美人】(ネタバレなし)

*ネタバレしませんが、本を読んでない人が読んでもいまいちピンと来ないブログかもしれません。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー紙の本の良さとは何だろう。・紙の手触り感?・本の全体像がつかみやすい?…

【緩募】選挙の情報源知りたいです

特にこれといった政治信条はなく、特別応援している政党も議員さんもいません。でも、やっぱ大人として選挙は行くべきかと思って、なるべくさぼらないようにしています。というわけで、4/9は統一地方選挙。といっても、選び方がよくわからない。まず、何かで…

「7つの習慣」や「人を動かす」が好きな方へ【自己啓発の時代】

ブログ目次 こんな方にお勧めブログまとめ本書の目的結論①結論②結論③読後の感想 こんな方にお勧め 7つの習慣人を動かすチーズはどこへ消えた?夢をかなえるゾウ雑誌「an an」日経ウーマン頭がいい人、悪い人の話し方もしドラ断る力考えない練習こうした本を…

古典を「古典として読み」たい【読書と社会科学】

まとめ ・情報を得る読書だけでなく、概念装置を獲得できるような読書も大事である。・概念装置の獲得とは、筆者が見るような仕方で世界を見る方法を手に入れることである。・古典は新奇な情報はなくとも、知っていることが新鮮に見えるような効果がある。・…

目の見えない人は世界をどう見ているのか【ブログを振り返るブログ】

【ブログ内容まとめ】 ・以前のブログを振り返ってみたらいろいろ発見があった。・ブログ作成時にはショートサマリーを作る方が、後で見返したときに内容がわかりやすい。引用はあった方がよい。・Deaf gainのように「障害」も「病気」も見方によってはプラ…

【メモ】スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険

本筋とは関係ないところが、印象に残った。 石器時代を念頭に置いて、「現代の環境は、人間の性質や脳のあり方に沿っていないからダメだ」という議論がしばしば用いられます。しかしこの論法は、人間が旧石器時代から現代に至るまでのあいだに、ほとんど身体…

玄人になろう

(スタンドUPスタート)1月からドラマ化された漫画のワンシーン。(ドラマは見てないし、漫画も買ったわけではなくLINEマンガで無料で読んだだけですが・・・)パチンコ店などの欲求ビジネスは、客の欲求を煽れば比較的簡単に利益を出すことができる。だか…

”たかが”と”されど”と、テニスと医師と阿波踊りと仏教

Amazon.co.jp: アンディ・マリー: 再起までの道 (字幕版)を観る | Prime Videoテニスを観ない人でも知っているテニスプレイヤーと言えば誰だろう?錦織圭や大坂なおみ、ロジャー・フェデラーあたりだろうか。このアンディ・マリーのことは知らない人も多いか…

他者としての体・他人【日本哲学の最前線③】

ブログ3回目。 https://bc-liber.com/blogs/a66859b0057f 中動態、自由意志、無自由【日本哲学の最前線①】 こば 01/11 07:59 https://bc-liber.com/blogs/1f1d99e1b0ae Easy Dokusyo-勉強の哲学【日本哲学の最前線②】 こば 01/11 15:10 4.手の倫理:伊藤亜…

ブログ2回目。 https://bc-liber.com/blogs/a66859b0057f 中動態、自由意志、無自由【日本哲学の最前線①】 こば 01/11 07:59 3.勉強の哲学 本書も以前ブログに残している。 https://bc-liber.com/blogs/9912460001e6 読書ログ「勉強の哲学 来たるべきバカ…

中動態、自由意志、無自由【日本哲学の最前線①】

J哲学とは? 土着の日本哲学、輸入された西洋哲学の枠組みを超えて、哲学に取り組む。日本語で行われているために「J」が冠されている。2010年代のそれは、「自由のための不自由論」という観点から論じることが可能で、本書はそれを6人の哲学者たちの著書か…