家庭医療専門医の勉強記録

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なんで現実世界にカーズはいないのか?【進化論はいかに進化したか】




進化論について、解説した本。

コテンラジオの深井さんが紹介してたので、読んでみた。


全体的には正直あまり面白いとは思わなかったが笑、それでも面白かったと思うポイントが3つあるので、要約してみる。
■陸上の覇者は人間でも、陸上に最適化した生き物は人間ではない
■なぜ、生き物には車輪がないのか?
■なぜ、人間だけが直立二足歩行なのか?


陸上の覇者は人間でも、陸上に最適化した生き物は人間ではない


(45pの図)

動物の体は多くのタンパク質が含まれる。
古くなったタンパク質が分解されると、アンモニアができる。

アンモニアは有害なので排泄が必要で、排泄には水が必要。
陸上では水が少ないから、体内で毒性の低い尿素へ変換できるように進化した。
→陸上生活が可能に

卵が柔らかいとすぐに乾燥してしまい、水にしか産卵できず、結局水辺周囲でしか暮らせない。
羊膜卵の進化により、水辺から離れて生活することが可能になった。

尿素は排泄する際に多くの水を必要とする。
尿素を体内で尿酸に変換すると、少ない水でも生活可能になった。


尿素を尿酸に作り変えることができる爬虫類や、爬虫類から進化した鳥類は、私たち哺乳類よりもさらに陸上生活に適した動物なのである。    47p



なぜ、生き物には車輪がないのか?

車輪は非常にエネルギー効率が良いし、多少凸凹した道であっても工夫すれば移動することができる。
それなのに、なぜ生き物は車輪を付けるように進化しなかったのか?

それは、端的に言えば「血管がある」からである。
生き物に車輪をつけても、回転しているうちに血管はねじれ切れてしまう。

逆に言えば、車は車輪に栄養を送る必要がないから血管は不要で、分解可能なパーツの組み合わせだからこそ車輪を付けることができた、ともいえる。



なぜ、人間だけが直立二足歩行なのか?

二足歩行する動物は、ニワトリやティラノサウルスなどほかにもいるが、直立二足歩行する動物は人間だけだ。なぜ他の動物は直立二足歩行に進化しなかったのか?

直立二足歩行のメリット
1.太陽光が当たる面積を減らせる
2.頭部が地面から離れて涼しくなる
3.遠くが見渡せる
4.大きな脳を下から支えられる
5.両手が空くので武器が使える
6.エネルギー効率が良い    例:マラソンは四足歩行のチンパンジーには無理
7.両手が空くので食料を運びやすい

直立二足歩行のデメリット
短距離走が遅い!!!!    ウサイン・ボルトですら多くの動物より遅い

生存に非常に不利なので、他の動物は直立二足歩行にならなかったと思われる。

じゃあ、なぜ人間はそんな不利な直立二足歩行に進化したのか?

人間の大きな特徴のもう一つ、犬歯の縮小と関連があるかも

犬歯は様々な争いの場面で役に立つが、エネルギー効率は必ずしも良くない。
人類は一夫一婦的な社会をつくることにより、同族同士の争いが減ったため必要性が減ったのかもしれない。
約700万年前の人類は、一夫一婦的な社会を作るようになったので、オス同士の争いが減り、犬歯が小さくなったのではないだろうか。    238p


また、一夫一婦的な社会は直立二足歩行の利点7「両手が空くので食料を運びやすい」の利益を享受しやすい。
「両手が空くので食料を運べる」ことは、直立二足歩行の利点の一つである。そして「両手が空くので食料を運べる」ことによって得られる利益の大きさは、社会形態によって変化する。一夫一婦制の場合に利益が大きくなるのだ。この場合の利益とは、自分が残せる子供の数である。    244p
わかりにくいので対比として多夫多婦的な社会を考えると、食料を運んで育てた子供が自分の子どもでなかった場合、直立二足歩行は遺伝せず、直立二足歩行する個体は増えない。つまり多夫多婦的な社会では直立二足歩行が増えにくい。
逆に、一夫一婦的な社会では、自分の子どもに食料を運ぶことで直立二足歩行する個体が増える。


まとめると、一夫一婦的な社会が到来することにより、犬歯の縮小や直立二足歩行というメリットを享受しやすい環境となり、結果として人類にそれらの特徴が定着したのではないかと考えられる。