家庭医療専門医の勉強記録

医学・非医学問わず、学んだことを投稿しています。内容の間違いなどありましたらご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

【人類と気候の10万年史】スケールを変えると、見え方が違う


人類と気候の10万年史過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか(ブルーバックス)[中川毅]




みなさん、ブルーバックスってご存じですか?
Wikiによると、「講談社が刊行している、自然科学や科学技術の話題を一般読者向けに解説・啓蒙している新書シリーズ」。
僕は、下の動画をみて、初めてその存在を知りました。


ヨビノリたくみさんが紹介している「非ユークリッド幾何の世界」は難しくて早々に脱落しましたが笑、今回紹介する本は面白く一気読みしました。



本書はそんなブルーバックスシリーズの一つ。
著者の中川毅さんは、立命館大学で古気候学、地質年代学を専攻されている方です。

内容はタイトル通り、地球の気候が、過去にどうなっていて、未来にどうなるかが書かれた本です。
本書のエッセンスを3点にまとめてみました!


 

1.現代の気候の解釈は、どんなスケールでみるかによって全然違う

1億年単位でみるのか、100万年単位でみるのか。10万年単位や1万年単位、100年単位でみるのか。見方によって、まるで見え方が違います。(詳細は後述)


2.未来の予測は難しい

本書ではこのように記されています。

変動に何らかの傾向が見られた場合、それを近い将来に当てはめることは必ずしも無意味ではない。しかし、本当に劇的な変化までは予測できないし、その先にどんな世界が待っているのかも本質的に不可知である。


現在当然のように議論されている温暖化も、気候を100年単位で見たときに予測される未来に過ぎない。もちろん温暖化に備えることは必要だけど、一方でその未来予測を過信しすぎないことも大事なのかな、と思いました。


3.スケールは壮大だが、やってることは地味

実は本書の半分近くは、如何にして気候を予測するのか?という著者の地道な研究のことが語られています。例えば、湖の底の土を採取して、そこに含まれる花粉を地道に分析することで過去の気候を推定する。1サンプルの分析に1時間ほどかかり、著者はこれまで1400サンプルほど分析したそうです。正直・・・面白くはなさそうです笑。

でも、「千里の道も一歩から」とか「Think Globally Act Locally」とかいうように、そうした地道な作業こそが最も大事なのかなと改めて感じました。
(若干方向性は違いますがミスチルの「彩り」の歌詞を思い出しました)

https://bc-liber.com/blogs/6342f968c781
 
 

【歌詞考察】彩り~アンサングヒーローの歌

こば
09/20 17:46
 




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以下、「現代の気候の解釈が、どんなスケールでみるかによって全然違う」ことを図を交えて説明しています。ご興味があればどうぞ。



 

1億年単位で見る

現代はむしろやや寒冷な時代である。

最も温暖な時代には、北極や南極に氷床が見られない時代もあった。
変動幅はおおよそ10度。

100万年単位で見る

徐々に寒冷化が進行しつつあり、寒冷な時代と温暖な時代の振幅が大きくなってきている。

10万年単位で見る

寒冷期と温暖期が周期的に訪れている。
このスケールで見ると、現代は温暖な時代である。
周期的な変化は、地球の公転軌道が楕円形になったり円形に近づく変化がおおよそ10万年で1巡することが主な原因と推定されている。(ミランコビッチ理論)




1万年単位で見る

10万年単位の変化に加えて、おおよそ2万3000年毎に平均気温の変化がみられる。これは地軸の向きが、倒れかけたコマのように約2万3000年で1巡するのが原因とされている。




100年単位で見る

過去100年間で地球の平均気温はおよそ1度上昇した。
これは東京都と宮崎県ぐらい違う。
シミュレーションによると、今後100年で地球の平均気温はおよそ5度上昇する。
これは東京都が奄美大島になる勢いだ。


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いかがでしたでしょうか。
日常とはかけ離れたスケール感が何とも爽快で、面白い書籍でした。

今回は紹介してませんが、

実は温室効果ガスは産業革命が始まる遥か昔から増えている!
とか

実は人類は温室効果ガスの放出によって氷期の到来を回避できているのかも!
とか

日本のコメの備蓄は不作が2年連続しても対応できる量だけど、歴史的な大飢饉は大体数年単位だから、ガチな飢饉には対応できなそう!
とか

興味深い話がいろいろ載ってますので、もしよろしければ手に取ってみて下さい。

最後までお付き合いいただいた方、ありがとうございました。