家庭医療専門医の勉強記録

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【読書ログ】生きづらさを持つ人こそが社会を変える力を持っている。

 

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母親が自殺した経歴を持つ著者が、自殺についてあれこれと語ったエッセイ。

僕の母親は、僕が小学校に上がったばかりのころ、自殺しました。隣の家の十歳下の青年とダイナマイト心中したんです。 2p

 

そのほかにも借金があったり、パチンコ依存だったり、不倫・離婚歴があったり波乱万丈な著者が、軽快な文体で自殺という重たいテーマを書いている。

 

母親が自殺したことで周りから同情されたり忌避されたりして、一時は母親を恨んだこともあったそうだが、自分の体験を人に話したりすることで楽になったとのこと。

母親の自殺が棘になっていた頃は、身勝手な母親を 恨む気持ちもありましたが、いまはいとおしく思います。十二月の寒い中、着の身着のままで家を飛び出し、何日か山の中に潜んでいる間に何を考えていたのだろうか、死ぬことを迷っていたのか、それとも相手の男が迷っていたのか、いずれにしてもつらかっただろうなと思って 可哀想 になります。 290p

自殺した人をいとおしく思う、というのは当事者にしか言えない感想だなと思った。

 

筆者は自殺する人はまじめで、だからこそ考え込んでしまって深みにはまってしまうんだだと言う。そして、そういう人こそが社会には必要なんだと。

そういう人たちが感じている生きづらさの要因が少しずつ取り除かれていけば、社会は良くなります。取り除かれないにしても、生きづらさを感じている人同士が、その悩みを共有するだけでも生きていく力が得られます。だから、生きづらさを感じている人こそ死なないで欲しいのです。 291p

生きづらさを持つ人こそが社会を変える力を持っている。